親方の独り言

本日 H様邸の棟上げ完了

何度経験しても 棟上げの時は スイッチが入る

基礎工事の時から 何度も何度も 図面を見直し
本当に これで良いのか
奇跡的に知り合わせて貰った人が一生住むことになる家に自分は責任を持てるのか
ベストを尽くせているか これ以上のプランニングは無いと 言い切れるのか
これ以上の空間構成は無いと 今の自分の力で納得出来るのか

契約から実際に現場が動き 新しい空間を造っていく作業工程の中で
基礎工事から上棟までの この一ヶ月間が自分の中では 一番大事な時ではある
寝ても覚めても ずっと 上棟する家の事ばかりを考えるようになる

骨組みが そのまま空間になる家造りを主眼に置いているせいもあるだろうけれど
美しい躯体は 美しい空間になると思っている

重力に対抗して空間は造られていく
素直に重力に対抗する姿は 必ず美しくなる

自分は技術屋ではあるけれど 技術は自然を凌駕出来ないと信じている所があって
人間の知恵を信じている所も確かにあるけれど
自然の力を借りないと 物造りは出来ないと思っていて
木や 川や 太陽や 月や 水や 風や 土や なんやかや
理解を深めるのは 深めようと努力するのは 技術屋の勤めで
その なんやかやを なるべく無理のない形で組み合わせてもらうだけで
自然の その なんやかやを 支配出来るとは思っていない

木を見て その年輪を見て
済まんなあ せっかく生きちょったのに50年ばっかしで死なせてしもうて
どこで どうやって育って来たんかのお 山は面白かったかのお
済まんけど ここで もう一働き 頑張ってくれんかのお
わしの 我が儘で切ってしもうたけど
無駄な死なせ方は させんように 頑張るけえ堪えてくれんかのお
50年や100年の樹齢の木は少なし自分より年上な訳で
粗末に出来ない 神に祈る気持ちで相対していないと失礼じゃなあと思わされる

ずっと ずっと考え続けて 上棟になる
上棟の時が一番悲しい時でもある
組み上がった空間は もう形を変えることはない
床を張ろうが 壁を張ろうが 空間としての原型は その時既に完成していて
後は その骨に肉付けしていく作業の連続で
もちろん それは それで 大事な事なのだけれど
上棟までは自分の子供のような気がしている家が
上棟が終わったその瞬間から そこに住む人の子供になる感覚を味わう事になる

分かり難い感覚かも知れないけれど
娘を嫁にやる気持ちに似ているのではないかと常々感じている

これから 電気屋 水道屋 左官 内装 板金 屋根屋 塗装屋 建具屋 サッシ屋
いつものメンバーが この地に集い それぞれの思いと熱意を落としていく
思いの一杯詰まった空間が また 一つ生まれる事になる
嬉しい事だけど 寂しい思いを味わう事になる
皆が思いを凝らした空間が 発注してくれた人の手に渡り
手塩にかけて育てた娘が 嫁に行くというのは こんな気持ちと対では ないかと
何時も思ってしまう

H様邸は 必ず もっと もっと良くなる
わしらあの思いを凝らした空間を 皆で造っていく

皆が「良くなれ良くなれ」と念じながら仕事をこなしていく
悪くなる訳ないじゃん

ほんに 物造りは楽しい

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